ISSUE
04
2026
07.27
ISSUE 04経費編

25,834円は、
職人1人を1日雇う値段ではない

国が決めた単価は25,834円。でも、この額で職人を1人1日そろえられるわけではありません。必要経費は入っていない——そう書いているのは、単価を決めた国土交通省です。

2026年7月27日 / データ出典 国土交通省(公共工事設計労務単価・公共事業労務費調査)
工事現場に掲げられた「保護帽完全着用」の標識
工事現場の「保護帽完全着用」の標識。
国が公表した単価令和8年3月適用
25,834円
1日(所定労働時間内8時間)あたり・全国全職種加重平均
実際にかかるのは
1人を1日雇う費用必要経費を加えた額
38,234円
単価の148%
差額12,400円は、単価に含まれていない。そう書いているのは、国土交通省自身である。
出典:国土交通省「公共工事設計労務単価について」(労務単価に必要経費は含まれない旨の記載および必要経費率148%による)

01単価に「入っている」もの

設計労務単価は、職人に払う賃金にかかわる金額です。ただし、単純な日給の目安ではありません。

国土交通省の資料によれば、この単価には次のものが反映されています。法定福利費にあたる額。義務になった有給休暇を取るための費用。そして時間外労働を短くするための費用。

つまり単価は、制度上の上乗せをあらかじめ織り込んだ額として設計されています。

02単価に「入っていない」もの

問題は、入っていないほうです。同じ資料に、こう書いてあります。

「労務単価には、事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません」

入っていないものは、はっきり挙げられています。現場管理費——法定福利費の会社負担分や、研修にかかる費用——と、一般管理費です。

そして、この一文が続きます。「よって、下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」

国は自分で決めた単価について、これは全部ではないと毎年書いています。

031人1日は、38,234円かかる

では、全部でいくらか。

国土交通省が示す考え方では、単価に必要経費を足すと合計は単価の148%になります。

25,834円で計算すると38,234円。差は12,400円。単価の48%にあたります。

単価と、1人を1日雇う費用

1日(所定労働時間内8時間)あたり・円/令和8年3月適用の全国全職種加重平均で試算
公表されている単価25,834
必要経費を加えた額38,234
差12,400円。単価という数字を「1人1日の費用」と読むと、この分だけ低く見積もることになる。
夕焼けを背に並ぶ複数の油圧ショベルのアーム
出番を待つ建設機械。

04では、その48%は誰が払うのか

制度上の答えは決まっています。現場管理費と一般管理費として、工事費のなかに別に計上されます。

単価に入っていないのは、抜け落ちているからではありません。別の項目に置いてあるからです。

ここも正確に書きます。制度がこの48%を無視しているわけではありません。

問題があるとすれば、計上されるはずのものが実際に計上されているか、という一点です。国土交通省は毎年、まさにその一点について「計上しないこと、値引くことは不当行為だ」と書き続けています。毎年書くということは、毎年書く必要があるということです。

05社会保険は、どこまで行き渡ったか

必要経費の中心にあるのが、社会保険の会社負担分です。では実際に、加入はどこまで進んだのか。

国土交通省と農林水産省が、平成23年度から毎年調べています。令和6年10月調査の結果です。企業単位の3保険加入割合は99.0%、労働者単位は95%。保険別では、労働者単位で雇用保険97%、健康保険96%、厚生年金保険96%でした。

3保険の加入割合は、13年でこう動いた

公共事業労務費調査 社会保険加入状況調査/平成23年10月調査と令和6年10月調査
企業単位
平成23年10月84%
令和6年10月99.0%
労働者単位
平成23年10月57%
令和6年10月95%
労働者単位は13年で38ポイント上昇した。ただし途中で算出方法が変わっている(本文参照)。

この数字は、この記事の論旨にとって都合が良くありません。必要経費が現場にまったく届いていないなら、加入率がここまで上がることはない。上がっているという事実は、事実として書きます。

ただし注記があります。令和3年10月調査以前は、法令上そもそも加入義務がない場合も母数に入っていました。令和4年10月調査以降は、それを外して計算しています。1本の線に見えますが、途中で定義が変わっています。

工事現場の柵に掛けられた「行き止まり DEAD END」の黄色い垂れ幕
工事現場の「行き止まり」の表示。

06その99%は、どこまでを測った99%か

加入率が上がったこと自体は動きません。動くのは、その数字がカバーしている範囲のほうです。

この調査の対象は公共工事に従事する企業と労働者です。民間工事は入っていません。単価が使われるのは公共工事の積算なので、対象の切り方としては筋が通っています。

ただし規模で見ると、2024年度の建設投資73兆200億円のうち、民間工事は46兆8,100億円。金額の64.1%を占めます。加入率99.0%は、金額で6割を超える範囲を測っていない数字です。

次数別も同じことが起きています。同じ資料には元請・1次・2次・3次下請の加入率が載っていますが、区分は3次下請まで。4次以下は集計の外です。数値も折れ線グラフだけで、表は公表されていません。

そして、値上げがいちばん通らないのは、まさにその外側でした。中小企業庁の調査では、転嫁率は1次下請で53.6%、4次以下では40.2%。いちばん苦しい層が、加入率の区分には存在しません。

分かっているのは、ここまでです。単価には48%分が入っていないこと。それは別項目で計上される建前であること。公共工事の範囲では、社会保険はほぼ行き渡ったと国が発表していること。そして、それでもなお国が毎年「値引くな」と書き続けていること。

この4つの間に何があるのかは、公表資料には書かれていません。

出典一覧

国土交通省 不動産・建設経済局「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表・全国全職種加重平均25,834円)/同「令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和4年2月18日公表・単価に反映される費目、および「事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれていません」「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」の記載)/国土交通省「公共事業労務費調査における社会保険加入状況調査結果を公表します」(令和7年3月28日公表・令和6年10月調査)。
※必要経費を含む1人1日あたりの額38,234円は、労務単価に事業主が負担すべき必要経費を加えた合計が単価の148%になるとの考え方に基づき、25,834円×1.48として算出した試算値である。差額12,400円および48%は同じ前提から算出。
※社会保険加入割合は、令和3年10月調査以前は法令上の加入義務がないケースを含み、令和4年10月調査以降はそれを除いて算出されている(同資料の注記による)。※元請・下請次数別の加入率は同資料に折れ線グラフとしてのみ掲載され、数値表は公表されていないため、本稿では具体的数値を記載していない。区分は3次下請まで。※同調査の対象は公共工事に従事する企業・労働者であり、民間工事は含まれない。/国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」(名目建設投資73兆200億円のうち民間46兆8,100億円)。民間の構成比64.1%は同見通しの金額から算出したものであり、企業数・労働者数の比率ではない。/中小企業庁(価格転嫁率調査・1次下請53.6%、4次以下40.2%)。

写真出典:ぱくたそ ※写真はイメージです

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単価には、48%が入っていない。
あなたの現場では、それは計上されていますか

制度の上では、必要経費は別途計上されることになっています。
実際に計上されているかどうかは、そこにいる人しか知りません。

ドカ場建設単価板