01単価は「全国で1つ」ではない
設計労務単価は、全国一律だと思われがちです。実際は違います。
47都道府県×51職種で、別々に決まっています。もとになるのは、国が毎年おこなう労務費調査です。
よく見る「全国平均25,834円」は、その表をならした1つの数字にすぎません。実際に積算で使うのは、その県の、その職種の単価です。
平均は、どの現場にも存在しない数字です。
02同じ職種で、1日8,800円の差
いちばん基本の職種「普通作業員」で、47都道府県を並べます。
最高は東京都と石川県の27,000円。最低は鳥取県の18,200円。差は1日8,800円。1.48倍です。
基準を置いておきます。同じ時期の普通作業員の全国平均は23,605円。東京都はこれより3,395円高く、鳥取県は5,405円低い。
普通作業員の単価:上位5県と下位5県
石川県が東京都と同額で並びます。都会だから高い、という図式では説明できません。
03同じ県の中でも、職種で1.83倍
差がつくのは地域だけではありません。
東京都の中だけを見ても、いちばん高い電工が34,300円、いちばん低い軽作業員が18,700円。同じ都内で1.83倍、1日15,600円の差があります。
東京都・職種別の単価
地域で1.48倍、職種で1.83倍。この2つは掛け合わさります。
04なぜ差がつくのかは、書かれていない
国の資料には、単価が労務費調査にもとづいて決まることは書いてあります。
でも、なぜ鳥取県が東京都の67.4%なのかは書いてありません。物価の差なのか、人が集まらないからか、地域の賃金相場か。資料からは判別できません。
理由が示されないまま、国が決めた価格に、同じ職種で1.48倍の開きが実在しています。差の大きさは1円単位で公表され、差の根拠だけが公表されない。
05県の差は公表される。段の差は公表されない
単価の地域差は、国が1円単位で出しています。47都道府県×51職種の表として、誰でも見られます。
ですが、その単価が現場の一人に届くまでに通る「段」の差は、県別には出ていません。
出ているのは階層別だけです。中小企業庁の調査では、値上げを価格に乗せられた割合は1次下請で53.6%、4次以下で40.2%。差は13.4ポイント。国土交通省の調査では、3社に1社(33.8%)が労務費を減らされたと答えています。
公表されているもの/されていないもの
これらの調査に、県別の内訳はありません。
だから「東京都の4次下請」と「鳥取県の1次下請」では、どちらの手取りが多いのか。公表資料からは答えが出ません。
分かっているのは2つだけです。単価の地域差は、同じ普通作業員で1日8,800円ある。階層による差は13.4ポイントある。この2つを重ねて集計した統計は、存在しません。
06そして、この数字は給料ではない
最後に、この白書が毎回書いていることを、もう一度書きます。
設計労務単価は工事費を計算するための基準額であって、職人が受け取る日当ではありません。
国土交通省は同じ資料の中で、この単価に必要経費が含まれていないことを明記しています。そのうえで、こうあります。「下請代金から値引くことは不当行為です」
つまり国は毎年、単価を上げ、同時に「値引くな」と書き続けています。
あなたの県の、あなたの職種の単価は、この表のどこかに載っています。そして実際にあなたが受け取っている額は、どこにも載っていません。
出典一覧
国土交通省 不動産・建設経済局「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表)/同 添付資料「都道府県別・職種別 公共工事設計労務単価一覧」。
※単価は所定労働時間内8時間当たりの額。時間外・休日・深夜の割増賃金、現場管理費(法定福利費の事業主負担分等)および一般管理費等の諸経費は含まれない(同資料の注記による)。※差額・倍率・平均値・中央値は公表値から算出。※普通作業員の全国平均値23,605円および全職種加重平均25,834円は、同報道発表 資料1「主要12職種 全国平均値」による(金額は加重平均値、伸率は単純平均値で算出との注記あり)。
【第05節】中小企業庁 価格転嫁率調査(1次下請53.6%・4次以下40.2%。差13.4ポイントは公表値から算出)/国土交通省「下請取引等実態調査(2024)」(労務費を減額されたと回答した企業 33.8%)。※いずれの調査にも都道府県別の内訳はなく、地域と下請階層を掛け合わせた公的統計は確認できていない。
写真出典:ぱくたそ ※写真はイメージです