ISSUE
03
2026
07.26
ISSUE 03地域差編

同じ国が決めた単価が、
東京と鳥取で8,800円ちがう。

設計労務単価は、47都道府県×51職種で別々に決まっています。同じ「普通作業員」でも、東京都は1日27,000円、鳥取県は18,200円。国が公表した表に、そのまま並んでいる数字です。

2026年7月26日 / データ出典 国土交通省(令和8年3月適用 公共工事設計労務単価)
山間部のダム建設現場。造成された斜面をダンプトラックが走る
山間部で進むダム建設の現場。
東京都 普通作業員令和8年3月適用
27,000円
1日(所定労働時間内8時間)あたり
同じ職種で
鳥取県 普通作業員同じ日から適用
18,200円
東京都の67.4%
1日あたり8,800円、倍率にして1.48倍。同じ国が、同じ日に決めている。
出典:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表)都道府県別・職種別単価一覧

01単価は「全国で1つ」ではない

設計労務単価は、全国一律だと思われがちです。実際は違います。

47都道府県×51職種で、別々に決まっています。もとになるのは、国が毎年おこなう労務費調査です。

よく見る「全国平均25,834円」は、その表をならした1つの数字にすぎません。実際に積算で使うのは、その県の、その職種の単価です。

平均は、どの現場にも存在しない数字です。

02同じ職種で、1日8,800円の差

いちばん基本の職種「普通作業員」で、47都道府県を並べます。

最高は東京都と石川県の27,000円。最低は鳥取県の18,200円。差は1日8,800円。1.48倍です。

基準を置いておきます。同じ時期の普通作業員の全国平均は23,605円。東京都はこれより3,395円高く、鳥取県は5,405円低い。

普通作業員の単価:上位5県と下位5県

1日8時間あたり(円)/令和8年3月適用・全47都道府県から抜粋
東京都27,000
石川県27,000
山梨県26,900
神奈川県26,800
静岡県26,600
‥‥‥ 中略(37県) ‥‥‥
佐賀県20,700
山口県20,500
宮崎県20,300
島根県19,700
鳥取県18,200
出典:国土交通省・都道府県別職種別単価一覧より、普通作業員の47都道府県値を抽出して並べ替え。47県の平均は23,534円、中央値は23,800円。

石川県が東京都と同額で並びます。都会だから高い、という図式では説明できません。

公共施設の建設現場に停まる油圧ショベル
地方で進む公共施設の建設現場。

03同じ県の中でも、職種で1.83倍

差がつくのは地域だけではありません。

東京都の中だけを見ても、いちばん高い電工が34,300円、いちばん低い軽作業員が18,700円。同じ都内で1.83倍、1日15,600円の差があります。

東京都・職種別の単価

1日8時間あたり(円)/令和8年3月適用・51職種のうち基幹10職種
電工34,300
鉄筋工33,800
法面工33,600
とび工33,100
石工33,100
ブロック工32,400
特殊作業員30,700
造園工27,700
普通作業員27,000
軽作業員18,700
出典:同前。51職種のうち、表の先頭に並ぶ基幹10職種を抽出。残る職種には潜水士や軌道工など特殊作業が含まれ、単価はさらに高い。

地域で1.48倍、職種で1.83倍。この2つは掛け合わさります。

04なぜ差がつくのかは、書かれていない

国の資料には、単価が労務費調査にもとづいて決まることは書いてあります。

でも、なぜ鳥取県が東京都の67.4%なのかは書いてありません。物価の差なのか、人が集まらないからか、地域の賃金相場か。資料からは判別できません。

理由が示されないまま、国が決めた価格に、同じ職種で1.48倍の開きが実在しています。差の大きさは1円単位で公表され、差の根拠だけが公表されない。

大阪の街なかの建設現場。小型の油圧ショベルと路線バス
都市部の道路沿いで進む工事。

05県の差は公表される。段の差は公表されない

単価の地域差は、国が1円単位で出しています。47都道府県×51職種の表として、誰でも見られます。

ですが、その単価が現場の一人に届くまでに通る「段」の差は、県別には出ていません。

出ているのは階層別だけです。中小企業庁の調査では、値上げを価格に乗せられた割合は1次下請で53.6%、4次以下で40.2%。差は13.4ポイント。国土交通省の調査では、3社に1社(33.8%)が労務費を減らされたと答えています。

公表されているもの/されていないもの

単価は都道府県別に公表。転嫁率は下請階層別にのみ公表
1次下請の価格転嫁率53.6%
4次以下の価格転嫁率40.2%
出典:中小企業庁。この調査に都道府県別の内訳は存在しない。

これらの調査に、県別の内訳はありません。

だから「東京都の4次下請」と「鳥取県の1次下請」では、どちらの手取りが多いのか。公表資料からは答えが出ません。

分かっているのは2つだけです。単価の地域差は、同じ普通作業員で1日8,800円ある。階層による差は13.4ポイントある。この2つを重ねて集計した統計は、存在しません。

06そして、この数字は給料ではない

最後に、この白書が毎回書いていることを、もう一度書きます。

設計労務単価は工事費を計算するための基準額であって、職人が受け取る日当ではありません。

国土交通省は同じ資料の中で、この単価に必要経費が含まれていないことを明記しています。そのうえで、こうあります。「下請代金から値引くことは不当行為です」

つまり国は毎年、単価を上げ、同時に「値引くな」と書き続けています。

あなたの県の、あなたの職種の単価は、この表のどこかに載っています。そして実際にあなたが受け取っている額は、どこにも載っていません。

出典一覧

国土交通省 不動産・建設経済局「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日公表)/同 添付資料「都道府県別・職種別 公共工事設計労務単価一覧」。
※単価は所定労働時間内8時間当たりの額。時間外・休日・深夜の割増賃金、現場管理費(法定福利費の事業主負担分等)および一般管理費等の諸経費は含まれない(同資料の注記による)。※差額・倍率・平均値・中央値は公表値から算出。※普通作業員の全国平均値23,605円および全職種加重平均25,834円は、同報道発表 資料1「主要12職種 全国平均値」による(金額は加重平均値、伸率は単純平均値で算出との注記あり)。
【第05節】中小企業庁 価格転嫁率調査(1次下請53.6%・4次以下40.2%。差13.4ポイントは公表値から算出)/国土交通省「下請取引等実態調査(2024)」(労務費を減額されたと回答した企業 33.8%)。※いずれの調査にも都道府県別の内訳はなく、地域と下請階層を掛け合わせた公的統計は確認できていない。

写真出典:ぱくたそ ※写真はイメージです

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表に載っているのは単価。
あなたが受け取る額は、載っていない

国が決めた単価は誰でも見られます。
その単価が現場でいくらになるかは、そこにいる人しか知りません。

ドカ場建設単価板