01単価は、給料じゃない
まず、ここを分けておきます。
国が毎年「単価」を決めています。2026年度は1日25,834円。ざっくり2万6千円です。
これは給料ではありません。工事の値段を計算するための、もとになる数字です。
しかもこの中には、会社が払う保険料などが入っていません。それを足すと、1人を1日雇うのに38,234円かかるとされています。およそ3万8千円です。
02単価は2倍。給料は2割5分。
単価は上がり続けています。14年連続で過去最高です。
2012年度は13,072円でした。それが2026年度は25,834円。ほぼ2倍になりました。
では、給料はどうか。厚生労働省の統計で建設業の給料を見ると、同じ14年でおよそ+25%。2割5分です。
単価は倍。賃金は4分の1。
単価の伸びのうち、給料に届いたのは25.6%だけ。つまり4分の1です。
おまけに、この間に物価も2割ちかく上がっています。差し引くと、実際の伸びはもっと小さくなります。
03増えた分は、どこへ行ったのか
値上げ自体は、通っているところがあります。
スーパーゼネコン5社の2026年3月期は、営業利益の合計が約8,347億円。前の年より55%増えました。各社の説明は「価格転嫁が進んだ」です。
問題はその先です。中小企業庁の調査では、上がったコストを値段に乗せられた割合は1次下請で53.6%。4次より下では40.2%でした。下に行くほど、値上げが通りません。
下へ行くほど、転嫁できない
国土交通省の調査では、3社に1社(33.8%)が「労務費を減らされた」と答えています。国は毎年「値引きは不当行為です」と書いています。それでも、この数字です。
04同じ建設業でも、こんなに違う
「建設業の給料」と、ひとまとめにはできません。厚生労働省の統計を3つの見方で切ると、こうなります。
- 会社の大きさ:1,000人以上で736.4万円。10〜99人で499.3万円。差は237万円。
- 仕事の種類:電気工事で547.6万円。土木で415.1万円。差は132万円。
- 住んでいる場所:大阪で709.5万円。高知で396.4万円。差は313万円。
規模・職種・地域、それぞれの格差
平均を見ても、自分の手取りは分かりません。
05同じ年で、金額そのものを並べる
ここまでは伸び率の話でした。金額そのものを並べます。
2022年度の単価は21,084円(全国平均)。同じ2022年に、東京の一人親方へ実際の日当を聞いた調査があります。答えは21,848円でした。
国が決めた単価と、現場が答えた日額(2022年)
数字だけ見れば764円多い。でもこの2つは、同じものを測っていません。
単価は、工事費を計算するための数字です。一人親方は、この21,848円の中から保険料も、道具代も、車代も払います。
国は同じ資料に、こう書いています。——下請代金から値引くことは不当行為です。
06仕事は増えている。会社は、潰れている。
建設の仕事自体は、減っていません。
2024年度の建設投資は73兆円。前の年より2.7%増えました。ただし過去最高ではありません。ピークは1992年度の約84兆円で、いまはその約87%です。
市場は、ピークまで戻っていない
ところが同じ2024年、建設会社の倒産は1,924件。前の年より13.6%増えて、この10年でいちばん多くなりました。
仕事は増えた。潰れる会社も増えた。
単価は2倍。ゼネコンの利益は+55%。それでも給料は+25%で、倒産は10年で最多です。
増えた分が、どこで、いくら消えたのか。それを段ごとに集計した国の統計は、ありません。
だから、ここから先を書けるのは統計ではありません。あなたの単価、あなたの手間。それが、どの統計にも載っていない一次データになります。
出典一覧
国土交通省「公共工事設計労務単価」「下請取引等実態調査(2024)」/厚生労働省「毎月勤労統計調査」「賃金構造基本統計調査(令和6年)」/国税庁「民間給与実態統計調査」/中小企業庁(価格転嫁率調査)/公正取引委員会「価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」/財務省「法人企業統計」/総務省「消費者物価指数」(総合・年平均。2012年→2025年で約+18%。2015年基準と2020年基準の指数を接続して算出)/各社 有価証券報告書・決算短信/東京商工リサーチ「建設業の倒産 過去10年間で最多」(2025年1月9日・2024年1〜12月/1,924件・前年比13.6%増)/国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」(名目建設投資73兆200億円、政府26兆2,100億円・民間46兆8,100億円、前年度比2.7%増)/全建総連東京都連合会「賃金調査」(東京・2022年2月の賃金を調査。一人親方¥21,848、手間請¥22,871、常用¥17,929)。2022年度の設計労務単価¥21,084および「必要経費分は含まれていない」「下請代金から値引くことは不当行為」の記載は、国土交通省「令和4年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和4年2月18日 報道発表)による。
※伸び率・差額は出典の公表値から算出。賃金の伸びは名目・概数。※2024年の建設業倒産は、集計基準により件数が異なる。本稿は東京商工リサーチの1,924件を採った(帝国データバンクは同年を1,890件と集計し、こちらも「過去10年で最多」としている)。※1992年度の約84兆円および2010年度の約42兆円は、国土交通省資料に掲載された建設投資額の推移による概数。2024年度比(1.74倍・約87%)は73兆200億円を用いた算出値。
写真出典:ぱくたそ ※写真はイメージです